Fitwelとは
Fitwelは、全ての人々に健康をもたらす建築環境及び屋外空間の性能を評価する認証システムです。Fitwelは米国疾病予防管理センター(CDC)と米国一般調達局(GSA)によって創設され、2017年に最初のリリースが行われました。現在は、非営利団体であるアクティブ・デザイン・センター(Center for Active Design, CfAD)に運営の移管が行われ、専門家による研究と分析に基づく開発と普及活動が継続して行われています。
Fitwelは他の認証制度とは異なり、必須要件やオンサイトの環境測定試験などは無く、誰もが取り組みやすい評価の容易性や、あらゆるプロジェクトに適用できる柔軟性、導入しやすい費用感を備えることで、世界中の建築物や不動産に健康配慮の取組みを普及させることを目的としています。
現在、Fitwelは60ヶ国以上で使用されており、2024年現在で13億平方フィート(約1.2億平方メートル)のプロジェクトが登録されています。
Fitwelの特徴
Fitwelは新築・既存建築物を問わず認証取得が可能です。また単一の建築物(プロジェクト)だけではなく、不動産ポートフォリオ全体についても認証を取得することも可能です。
評価基準は以下の7つの健康に影響を与える要素によって、その評価尺度や重要度が決定されています。また、評価項目間の重み付けは、そのプロジェクトが選択する評価項目によって変動する、ダイナミック・ポイント・システムが採用されており、プロジェクトの特性や強みを反映しやすいという特徴があります。
Fitwelの7つの健康カテゴリ
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周辺コミュニティの健康に対する影響 |
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罹患率や欠勤率の減少 |
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社会的弱者に対する公平性への支援 |
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ウェルビーイングの促進 |
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健康な食事へのアクセス |
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建物利用者の安全性の向上 |
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運動機会の向上 |
Fitwelの評価システム
Fitwelは2024年6月に改訂版であるv3が公開されており、2025年1月からはv3による登録・認証が必須となりました。以下ではv3の内容をベースに説明します。
Fitwelは基本的に全ての用途の建物・サイトを評価することが可能です。具体的には以下のスコアカードの何れかを適用して評価を行います。また複合用途となる場合は、複数のスコアカードを併用して評価を行います。
<Fitwelのスコアカード一覧>
- Building Scorecards(建物とその敷地を対象)
- Workplace(事務所等、以下のスコアカードの総称)
- MTWB(複数テナントを含む建物全体)
- MTWB+(複数テナントとオンサイトの維持管理を含む建物全体)
- MTBB(複数テナントの専有部を除く建物全体)
- ST(単一テナントビルの建物全体)
- CI(単一テナントの専有部のみ)
- Multi-Family Residential(複数住戸で構成される住棟全体)
- Senior Housing(ケア付き高齢者住宅など)
- Workplace(事務所等、以下のスコアカードの総称)
- Site Scorecards(敷地と共用部のみを対象)
- Commercial & Industrial Site(商業・工業用途の敷地・共用部)
- Community Site(住宅用途を含む敷地・共用部)
各スコアカードにはそれぞれの用途に応じた評価項目が含まれており、12のカテゴリに分類された合計90程度(Workplaceの場合)の項目により評価を行います。評価項目により選択項目が設けられている場合には、そのうち1つを選択して評価を行います。
評価はFitwelのウェブサイトに設けられたプラットフォームにより行いますが、スコアカードはExcelベースのものも公開されており、オフラインで点数を確認することも可能です。
評価結果は得点に応じて1~3つの星でレーティングされます。認証取得には90点以上の獲得が必要です。

Fitwelの認証制度
Fitwel (Asset) Certification -アセット認証
単一の建築物やプロジェクト(アセット・レベル)に対する認証制度であり、竣工前の物件を対象とするデザイン認証(Design Certification)と、運用中の物件を対象とするビルト認証(Built Certification)の2つの認証パスウェイがあります。認証の有効期間は、どちらも認証日から3年間であり、有効期限前に申請することで認証を継続することができます。
認証プロセスは、Fitwelのウェブサイト上に構築されたプラットフォームを通じて、登録→資料作成→申請・審査→認証というフローで行います。審査は申請から16週間以内(アンバサダー登録を行っている者が申請する場合には12週間以内)に行われ、迅速な認証取得が可能です。
費用は登録と申請の際にそれぞれ以下の費用が発生します。(2025年4月現在)
- 登録費用:1物件当たり500米ドル
- 認証費用(申請時に発生):下表の通り
Buildings Scorecards | |
延床面積 | 費用(米ドル) |
50,000 sq.ft. (約4,600㎡)未満 | $7,500 |
100,000 sq.ft. (約9,300㎡)未満 | $8,000 |
250,000 sq.ft. (約23,000㎡)未満 | $8,500 |
以下省略 |
Site Scorecards | |
敷地面積 | 費用(米ドル) |
20 acres(約81,000㎡)未満 | $14,000 |
500 acres(約200,000㎡)未満 | $14,000+100acres毎に$100加算 |
以下省略 |
アセット認証は、GRESBの2025年のレポーティングより、Building Certifications(BC1.1、BC1.2)の評価においてFull pointとして評価されるようになりました。今後、不動産業界におけるESG戦略としてFitwelの活用が進むことが期待されます。
https://www.fitwel.org/blog/elevate-your-gresb-score-for-2025-start-planning-with-fitwel-today
Fitwel Scale Certification -スケール認証(FSP; Fitwel Social Performance)
スケール認証(FSP)は複数の資産で構成されるポートフォリオ全体を評価対象とする認証で、個々の建物の健康配慮に関する取組みとそれを支えるEntityレベルにおける戦略や活動について評価します。健康配慮に関する評価だけでなく、ESGに関する取組みにもフォーカスしていることが特徴であり、近年需要が高まるESG投資に関する有力なエビデンスを提供することを目的としています。
具体的には、ステークホルダーとその資産価値に影響を与える以下に示す戦略を特に重視した評価項目の構成となっています
- 高品質な環境を創出することへの取組み
- レジリエンス性能の創出
- 建物利用者や周辺コミュニティとの関わり
- 公平性の促進
- 歩行空間やアクティブな移動のための取組み
- バイオフィリアの創出
また、1/3以上の評価項目がアセット認証と共通となっているため、一部の物件でもアセット認証の取組みを実施または認証を取得している場合には、FSPをより導入しやすくなるという特徴もあります。
アセット認証と同様に、FSPについてもGRESBの2025年のレポーティングより、Building Certifications(BC1.1、BC1.2)の評価に反映できるようになりました(ただし、FSPの場合にはPartial pointとして評価されます)。
弊社では、Fitwelの認証取得に向けた戦略検討、評価実施、申請資料作成など、Fitwelに関する業務を包括的に実施しております。ご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。